犯罪を防げる?防犯ガラスを設置する場合に知っておきたい基礎知識
住宅を狙う犯罪を防ぐために有効な、防犯ガラスの基礎知識について解説します。防犯ガラスの導入によって住宅の防犯性は高まりますが、導入する場合は正しい知識が必要です。今回の内容を参考に、最適な製品を探してみてください。
■防犯ガラスとは?
まずは、防犯ガラスの概要について解説します。
防犯ガラスは、その名のとおり防犯性が高いガラスの総称です。衝撃を加えても貫通しにくいため、犯罪者の侵入を防ぎやすくなります。
ただし「割れない」「破壊されない」というわけではありません。映画やドラマでは拳銃の弾丸も防ぐガラスが登場しているため、防犯ガラスに関して「割れないガラス」というイメージを持っている人もいるようです。実際の防犯ガラスには、そこまでの強度はありません。
一方で、防犯ガラスの設置によって確かな防犯効果が期待できます。空き巣や泥棒などの侵入犯は多くの場合、窓から侵入します。加えて、多くの犯罪者は侵入に時間をかけることを嫌うのです。
防犯ガラスは貫通しにくいガラスであり、割って室内に侵入することは簡単ではありません。このように、一般的なガラスから防犯ガラスに変えるだけで、防犯効果は大幅に高くなるといえます。
■防犯ガラスの構造と強度
通常の窓ガラスは、一枚のガラスで構成されています。そのため、衝撃が加わりガラスが割れると、破片が脱落してしまうのです。
対して、防犯ガラスは2枚のガラスを合成樹脂で圧着させています。外部から衝撃が加わりガラスが割れたとしても、合成樹脂の膜が密着しているため破片が脱落しないのです。さらに、合成樹脂の膜により高い耐貫通性を有しているため、簡単に穴を開けることができないのです。
防犯ガラスの強度を比較する際、参照されるのが中間膜の厚さです。以下では、中間膜の厚さに応じた強度について簡単に解説します。
- 中間膜の厚さ30mil(0.76mm)
強度:低
ドライバーを利用したこじ破りに対しては、有効とされる。ただし、バールなどで強い衝撃を与えられた場合は防ぎきれない。
- 中間膜の厚さ60mil(1.52mm)
強度:中
防犯ガラスとして、最も一般的なタイプ。ガラスに衝撃を与えて侵入する打ち破りにも、ある程度対応可能と考えられている。
- 中間層の厚さ90mil(2.28mm)
強度:高
打ち破り対策としても期待できる強度。ただし、防犯ガラス全体が厚くなるため、一般的な住宅の窓サッシには入らないケースがある。
防犯ガラスの強度は中間膜の厚さのほか、中間膜の素材によっても異なります。中間膜の素材としては、ポリビニルブチラール(PVB)が一般的です。ポリカーボネート(PC)を中間膜に使用した防犯ガラスは、さらに強度が高くなりますが、その分コストが大きくなります。
■防犯ガラスと混同されるガラス
防犯ガラスのほかにも、防犯性の向上を目的としたガラスが存在します。以下では、そうしたガラスの代表例を紹介します。
・合わせガラス
合わせガラスは、2枚のガラスを樹脂膜で圧着したガラスのことです。定義上は防犯ガラスと同じであり、防犯ガラスを指して「合わせガラス」と呼ぶこともあります。ただし、防犯ガラスが中間膜30mil以上のものを指すのに対し、合わせガラスの中間膜は15milしかありません。合わせガラスは一般的なフロート板ガラスよりも高い防犯性能がありますが、防犯ガラスと比較すると防犯性能が劣ります。
・合わせ強化ガラス
合わせ強化ガラスは、中間膜に強度が高い樹脂を使用した合わせガラスです。一般的な合わせガラスよりも、高い防犯性を有しています。
・合わせ複層ガラス
合わせ複層ガラスは、合わせガラスを使った複層ガラスです。防犯性を高めるための合わせガラスと、断熱効果を高めるための複層ガラスのハイブリッド型といえます。
・強化ガラス
強化ガラスは、熱処理を加えた後に冷却処理を施したガラスのことです。一般的なガラスよりも高い強度を誇りますが、犯罪者の侵入を防ぐほどの防犯性能はありません。割れた際に粉々になることから、災害時の安全性に優れている点が特徴です。防犯ではなく、災害時の安全を重視したガラスといえます。
・網入りガラス
網入りガラスは、内部に網を仕込んだガラスです。火災時に炎の流出や飛散によりけがをすることを減らすため、防災効果に優れています。一方で、衝撃に対する強度は高くないため、防犯目的には適していません。
・ペアガラス
ペアガラスは、2枚のガラスの間に空気層を設けたガラスのことです。断熱性が高まるため、住宅の快適性が向上します。ただし、強い衝撃は想定されていないため、防犯目的では使用されません。
■防犯ガラスを選ぶ際のポイント
防犯ガラスを選ぶ際のポイントについて解説します。
・強度
強度は防犯ガラスを選ぶうえで、重要なポイントです。防犯ガラスの強度は、中間膜の厚さによって決まります。中間膜が厚いほど強度が高くなりますが、その分コストも高くなるため、求める強度に応じて慎重に判断しましょう。一般的に60mil以上の中間膜の防犯ガラスであれば、打ち破りの犯行などにも一定の効果が見込めると考えられています。
・防音性能
道路に面している窓の場合は、防音性能にこだわるのもおすすめです。合わせ複層ガラスなどであれば、防犯性のほか防音性能や断熱性能も期待できます。
・UVカット機能
日差しが強い方角に設置する場合は、UVカット機能に注目しましょう。中間膜にPVBが使用されている防犯ガラスは、99.9%の紫外線をカットするといわれています。
・CPマークの有無
警察庁、国土交通省などで構成された官民合同会議が実施している試験を通過した製品には、CPマークが付与されています。信頼性の高い防犯ガラスを探している場合は、CPマークの認定を受けている製品を選びましょう。
■まとめ
今回の記事で、防犯ガラスについての理解を深めていただけたのではないでしょうか。衝撃によって壊れないわけではありませんが、貫通しにくいため侵入は難しくなります。求める防犯性能やその他の性能によって最適な製品は異なるため、今回紹介したような情報を理解したうえで住宅に最適な防犯ガラスをお選びください。